事実の記述は真か偽か(正しいか誤りか)のどちらかだ. つまり, 数学のことばを借りれば, 事実の記述は二価ーtwo-valuedーである. これに反して意見の記述に対する評価は原則として多価ーmulti-valuedーで, 複数の評価が並立する.
『理科系の作文技術』 木下 是雄 P.107
先日、Kさんと事実と意見について会話を交わした。ウェブサイトの文章は、事実と意見を混用している、といった内容だった。ビジネスサイトは、自然現象や自然法則、あるいはしかるべき調査によって真偽を確認できる事象を扱っていないので、ほぼ意見によって構成される。
意見の中には、
- 推論
- 判断
- 意見(上記の一般的な”意見”ではなく私見に近いニュアンス)
- 確信
- 仮説
が含まれる。ウェブサイトの文章は、これらの意見の説得力と訴求力を向上させなければならない。そこで、コピーライティングの技術を援用したり、図や数値を引用する。説得力と訴求力が、ユーザの期待値や世間の平均値を上回った時、意見は「事実」に昇格する。ただし、この事実は特定の業界内で通用する事実であって、理論がすべての人に容認されて法則へと呼ばれるような「事実」ではない。
ビジネスサイトの事実は、あともう一つある。それは、法律や慣習などを扱う時に、ユーザが認識する事実。事実という表現、否、定義が間違っているけど、ビジネスサイトの場合、これも事実として扱われる。
ウェブサイトの文章を書くにあたり、法律や慣習などの事実を説明する時、執筆者はそこに意見を挿入する。この意見は、上記の私見に近いニュアンス、あるいは解釈だ。意見を付け加える行為は、付加価値の一環だから問題ない。問題は、「事実」と「意見」を峻別して書かない点にある。サイト運営者は事実と意見を峻別してわかりやすく書かないと、ユーザは何が事実で何が意見かを判断できない。
そして、ユーザはそもそもウェブサイトの文章を読む時、「事実」と「意見」を意識しながら峻別していない。1pあたりの平均滞在時間は30-60秒、長くて90秒、だからそれらを意識して読んでいない。
サイト運営者はこのデータを理解して、「事実」と「意見」を分けて記述しないと、ユーザは無意識のうちに混乱している。結果、「わけがわからない」と判定する。
「わけがわからない」と判定される要素は、3つある。
- てにをはが合わない
- 事実と意見を分けて記述していない
- 簡単なことを難しく書く
上記の要素の比率は3:3:3で残り1は想定外の要素。つまり、この3つの反対を心がければ、「訳が分かる」文章を書ける。ただし、それを自分の意図したとおりに読んでもらえるかどうかは保証できない。階層が異なる。
では、どいういった文章が、「わけがわからない」か?
それがこのエントリーだ。すべて意見であり、てにをはが合わなくて、誰が聞いても簡単な話をさもありなんと書く。このエントリーがビジネスサイトで採用してはいけない典型例である。