SAW4

ソウ〈4〉 (角川ホラー文庫)

Slasher filmをこわいよぉとブルブル震えながら観る。両手で目をふさいで、人差し指と中指の間、ちょこっとだけ隙間を作って。おそるおそる。そんな私がSAWシリーズを読むときや観るとき、ちょっと変わる。震えるけどこわいからじゃない。禁忌にふれたような気分? 畏怖? ジグソウのフィロソフィーに魅了されてしまう。レクター博士とは位相が異なる。共通は怪物の口から発せられる言葉。そのひとつひとつに霊妙な秘密が隠されている。

これから本編を観る人、このノベライズを読み始める人のためにアドヴァイスするとしたら、特に 『ソウ3』 をよく観返すなり、読み返すなりしてからこのパート4に臨んだほうがいい、と申し上げたい。

『ソウ〈4〉 (角川ホラー文庫)』 行川 渉, パトリック メルトン, マーカス ダンスタン P.252 解説

SAWの特徴は時空にあると思う。時間と空間を操り観客をあっと驚かせる。”時間”が私を魅了するもう一つの要素。それはジグソウのフィロソフィーとリンク。過去・現在・未来の生への感謝。時間と生。空間と生。

ややもすれば私は「生きていること自体」を忘れる。それがあたりまえであるかのように。忘れた瞬間、「生きていること自体」に感謝しなくなる。欲望にまみれる。有限の生のなかに可能無限の欲望をそそぐ。欲望は実無限であるかのように。

やがて不条理が訪れる。そのときはじめて「生」に感謝し、幸福を喚起する。不条理はある日突然やってくる。それは偶然だ。偶然の不条理によってもたらせる必然の幸福。不条理と幸福はコインの表と裏。

しかし、ジグソウは必然のごとく登場人物に不条理を襲いかからせる。この必然を招いたのはお前の日常だと言わんばかり。舞台を用意。あとはその不条理を受け入れるかどうか、おまえ次第。「決断」を自ら選択させる慈愛。一瞬でも幸福を味わえ、不条理の前にとでも吐露するかのような冷酷。慈愛と冷酷が同一の感情に同居する。

「ゲームを始めよう」で生を自覚、「ゲームオーバー」で不条理を体感。

読み手がゆだねた生への希望。かすかな期待もこなごなに打ち砕くニルアドミラリ。己がコントロールできないものまで求める執念。救済は君の手に負えないのだ

ゲームは始まったばかり。ただしジグソウは仮想であってほしいと願う現実。