[Review]: 21Grams

21g

『21グラム』 アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ

監督は、『バベル』アレハンドロ=ゴンサレス・イニャリトゥ。彼の映画にはひとつの特徴がある。それが、「時間軸の交差」。物語が過去・現在・未来の直線に展開するのではなく、それらが細かく交差し、まるでジグソーパズルのピースのように映し出される。そして、最後に1枚の絵が完成する。

だから観ている者は、最初とまどうかもしれない。過去・現在・未来が細切れにバラバラにされ、たくみな編集によって最高値構築される世界。観ている者は、眼前の映像が直線に展開していると誤解した瞬間、理解から遠く離れた自分を自覚する。それでも交差する時間軸と映像に魅了されてしまうのはなぜだろう。過去と現在の映像と映像が象徴となる物質や音声でつながれていく。

主要な登場人物は

  • 余命一ヶ月と宣告され、心臓移植の順番を待つポールPaul Rivers(=Sean Penn)
  • 信仰に没頭することで心の平穏を保つ前科者のJack Jordan(=Benicio Del Toro)
  • 優しい夫と2人の娘と幸せに暮らすクリスティーナCristina Peck(=Naomi Watts)

まったく関わりのなかった3人。しかし、ある日突然起こった交通事故を契機に互いに交錯し、ひとつの心臓へ引き寄せられていく。Benicio Del ToroTRAFFICでアカデミー助演男優賞を受賞したが、本作品でもノミネートされ、Naomi Wattsも助演女優賞にノミネートされた。

プロットを冷静に鑑みたとき、目新しさはないかもしれない。しかし、善悪の二項対立では裁けない矛盾した現実が眼前にある。

失うものと得るもの。私たちは何を失い、何を得るのか。私たちは何かを話そうとするとき、必ずしも過去から未来へ理路整然と口にするとは限らない。ときに、「今」を話し、突然、「過去」に戻り、また「今」を脳裏に描き、刹那、「未来」へとのびていく。

「絶望」と「希望」 が私の中で交錯する。そのとき、どちらかを選択するかではないと私は思う。その両者を抱えながら生きていく。

“Life goes on “

「それでも人生は続く」——たびたび聞こえる台詞。人生は続く。その人の生だけが「人生」ではないと言わんばかりに。

ラストシーン。ベッドに横たわるPaul Riversがナレーションのように読み上げていく言葉。

How many lives do we live? How many times do we die? They say we all lose 21 grams… at the exact moment of our death. Everyone. And how much fits into 21 grams? How much is lost? When do we lose 21 grams? How much goes with them? How much is gained? How much is gained? Twenty-one grams. The weight of a stack of five nickels. The weight of a hummingbird. A chocolate bar. How much did 21 grams weigh?

人は人生を何度生き、人は何度死ぬのか?

人が死ぬと21グラムだけ体重が減るという。どんな人も。

21グラムとは何の重さだろう

何を失うのか

いつ21グラム減るのか

どれほど失うのか

何が得られるのか

どれだけ得られるのか

21グラム

5セント硬貨5枚

ハチドリの体重

チョコ・バー 1個

21グラムの重さとは?