Next Leadership

知識デザイン企業 P.211

創造には、「体験的認知」と「内省的認知」と共に必要である。

ところが、現代社会は「体験的モード」に過度に傾斜しているとノーマンは指摘する。たとえば「現在の多くの機械とその使い方がうまくいっていないのは、体験的状況に対して内省のためのツールを、内省的状況に対して体験ツールを与えてしまっていることによる」混乱があるというのである。

『知識デザイン企業』 紺野 登 P.165

体験的認知のほうがわかりやすい。反射的でスピーディな思考だけでよい。よって、現場の具体的事例(エピソード)を物語(レシ)へ昇華させるプロセスは敬遠されがち。そのプロセスは内省的認知を求める。処理が遅くて面倒な内省的思考。

ドナルド・A・ノーマンは、『人を賢くする道具―ソフト・テクノロジーの心理学』 のなかで、人間の認知を2つに分類した(ただし、たった2つに分類する危険性を認識している)。それが、「体験的認知」と「内省的認知」。

体験的認知

  • 知覚による処理
  • 特別な努力なしに効率よく周囲を知覚でき反応できる
  • イベント駆動型モード

内省的認知

  • 概念を扱う認知
  • プランニングのための認知
  • 比較対象や思考、意志決定のモード
  • 新しいアイデア、新たな行動の源泉

今、体験的認知へ過度に傾斜している。メディアは、現場で成功した事例をそのまま運搬する。メディアは内省的認知を知らない。否、メディアを受信する側が、「早い話が、体験的認知のほうがわかりやすい」(『知識デザイン企業』 紺野 登 P.166) から内省的認知を省略してしまう。

ぼくは、「現場→抽象→現場」というプロセスを、このブログで書いてきた。その回路と2つの認知プロセスを融合させたイメージが下。

仮説推論の値

現場Aを認識して「見た」ものや「感じた」こと、五感が受信した現象を体験的思考から観察する。それを内省的思考を使って抽象概念へ変換させる。今度はそれを現場A’で実践する。現場Aは過去、現場A’は未来。その差異に存在するのが現在。それが、「場」だ、とぼくは考える。「場」を創造。時間と空間のデザイン。美的感覚。審美観。ユニークな場。

この三角形の根幹が、仮説推論の知。そこには「共通言語」や「パターン」、あるいは「構造」や「分類」など -ology の方法や哲学のアプローチなど知の技法が求められる。

過去の現場Aから未来の現場A’へ「現場」を生じさせる「場」。「場」を創造するリーダは、「Next Leadership」を修養しなければならない、と考える。

Next Leadershipは、人を引っ張ったり動機付けしたりすることじゃない。HRPF の思考を現場へ提供してスタッフといっしょに考える。この「考える」プロセスそのものを「見る」。体験的認知と抽象的認知を融合させる創造的イニシアチブ。

Next Leadershipの要素

  1. 認識できていない知を発見し、知覚させる
  2. 主観と全体の両面からアプローチする
  3. 図像、形態、パターンなど視覚的言語を使う
  4. -ologyとphilosophyからアプローチする
  5. 認識と実践、継続、終わりなき対話を根気よく実行する
  6. 待つ

スタートラインに立ったにすぎない。文章の体裁をとりつくえない。言葉と図で抽象的なお遊びを楽しんでいるのかもしれない。それを指摘してもらえるように常に他者へ開きたい。