解なし

琵琶湖

たとえば, 人びとが従来の苦いビールに代わる新しいビールの登場を求めているとしても, 「どんなビールを飲みたいか」という尋ね方では消費者にいくら問いかけても答えが得られないことがほとんどです. 消費者は自分の欲求するものを適切に表す言葉を思いつかないからです. そこで消費者調査の過程においてビールの味を表現する形容詞を取捨選択した某社は, 大衆に望まれる「キレ」や「コク」という言葉を発見し, それに見合った商品技術を採用して巨大なシェアを得ました.

『知の論理』 P.224

大学の時、マーケティング論を受講していると、教授がしゃべっていた。ビールやラーメン。あの当時、どうしてビールなんだって不思議で、図書館で調べると「代名詞」かと納得した。たぶん、どこでも同じ事例を使っていたのだろう。ゼミでも教授が口にしていたように覚えている。一つの成功事例を解説する。すべて「後」。分類・整理されて記述できるようなった疑似体験。

「キレ」と「コク」を今も求めているか? 代わるとしたら何?

今は、ビールの中に”ビール”がある。右肩下がりの価格。それに「あたりまえにビールを飲む」という前提が崩れてしまった。「とりあえず」がない。ビールの味”だけ”を追求していけば売れない。

この事例を目にすると、テストやリポートへ記載した内容を想起する。「消費者から答えを得られない」、つまり、「適切に表現する言葉」を持っていないなら、それを引き出す「仕方」を企業は常に模索しなければならないと。じゃぁ、「仕方」って何だ? って具合、それがマーケティングなのかなぁ? とぼんやり講義を聴いていた。ほんとぼんやり。

「○○とは何だろう?」や「○○をどう思いますか?」と尋ねても対象者は答えない。疎かな設問を用意したアンケート用紙をテーブルに置いてある。書かない。書いたとしても有効な回答を得られない。「問い」を作る過程を省略して「答え」を導き出している。

先輩から耳にした。「ウチの旦那はたくさんの歯科医院へ行ってる、と奥さんが友人たちへしゃべったら」という話。対象者は適切な言葉を見つけられないでいるし、医院はそれを発見できていない。距離。

マーケティングを使わずにマーケティングを実行する。言葉をうのみせず、試行錯誤。そこから意味を発見する。「意味」を意味したいとき、言葉を探し始める。欲求のスイッチをオンさせよう。そういった遠回りな人たちがいてほしいな、と願う。