選択する機会

岐路

道が一本あれば、行く手は自然にその一つに決まる。選択する機会が失われる。その不自由さに、人は安堵して、歩み続けるだろう。立ち尽くすよりも歩く方が楽だからだ。
そして、その歩かされている営みを「意志」だと思い込み、その楽しさ加減を、「幸せ」だと錯覚する。

『恋恋蓮歩の演習―A Sea of Deceits』 P.12

僕の手帳は真っ白だよ、と伝えたとき、あなたはきょとんとした。数年後、わかったと伝えてきた。真っ白な手帳は自由と孤独。自由と孤独は一対。手帳をめくると白色。その罪悪感はいつしか意志へと変わる。

ぎっしり詰まった予定を持ち歩く人が、ある日、真っ白になった。恐怖が襲いかかってきた。慌ただしく動き回る周りの視線。突き刺さる。劣等感。

劣等感を抱く私から解放させる私。意志。

孤独という自由を、人は恐れ、
その価値を評価しないよう、
真の意志の存在を忘れるよう、人は努力する。
自分たちを拘束する力を「正しい」と呼んで崇めるのだ。

『恋恋蓮歩の演習―A Sea of Deceits』 P.12