ペットボトル1本分の距離

昨日、皇子山公園で写真を撮っていた。15時頃の光がとても好き。やわらかい感じで、しなやかにのびていく。その頃に散歩へ行く。とても大切な時間。同じ風景を眺めながら散歩していると、頭の中では映像と単語が次々と浮かんでは消えてゆく。消えないように待ってと手をのばす。

皇子山公園の紅葉

そろそろ引き返そうかと思ったとき、横道から老夫婦が歩いてきた。どこへ行くのか立ち止まって後ろから見ていた。二人は急な下り坂を慎重にゆっくりゆっくり、手をつないで歩いていた。すぐに追い越してしまいそうだったので、僕はもう少し写真を撮っていた。

老夫婦

ふと気がつくと、老夫婦の姿が見えなくなったので、二人が下っていった坂道をトレースした。左手に僕の好きなベンチがある。そこに二人がいた。9年ほど前に僕が住み始めた頃、琵琶湖を望めた。今はマンションが並んでいる。

老夫婦

ファインダから見えるペットボトル1本分の距離。すごく素敵な空間だった。少しの間、見惚れていた。すると、奥様は右手でどこかを指さし、旦那様の方へ躰を少し傾けた。奥様と旦那様とベンチで、二等辺三角形みたいな形なった。その中にペットボトルがあって、隙間から向こうが見える。二人の姿を照らす光が美しかった。