[Reivew]: 数に強くなる

数に強くなる (岩波新書)

数(すう)と数(かず)の違いを知りたい方は一読を。

知識を伝達し、共有するためには、言葉でなく、数を作ることが必要である。逆に言うと、数を作って表出するから、知識は正しく伝わり、共有できるのである。だから、「数を作る」ということが大事だと思うのである。

『数に強くなる』

筆者が考える「数に強い人」は2種類いる。

  1. 物事を数量的に考えることができて、しかも覚えておくことができる人
  2. 物事から数を引き出して、自分の実現したいことの道筋にその数を乗せ、加工し、発展させることができる人

1.の人は、物事の全体像を頭に入れ、その全体像との絡みで数を考える。2.の人は、「数を作れる人」である。計算が速いとか、記憶力がよいとかは、「数に強くなる」ための必要条件ではない。

たとえば、家族の食事を作るとき、自然にできている人がいる。午後7時にごはんを食べる時刻にセットしたとする。そのうえで、各献立の調理にかかる所要時間をまず勘定し、7時を基準にしてスタート時刻を設定する。

数に強い経営者は全体を把握する。四則演算を使うぐらいで、微分や積分、方程式など論外。ところが、全体の傾向を見ている。意識しているかどうかは別として、

  • どれだけの入るか・出るか = 微分
  • どれだけ貯まったか = 積分

を、時間軸を測定して把握している。正確な数値はB/SとP/Lから算出される。経営者が掴んでいる数は、その数値に近い。私自身、会計事務所に勤めていたとき、その感覚に驚き、自分との違いを思い知らされた。

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[目次]

はじめに—-数(かず)とはどんなものか

1 数に強くなる

前口上 / 数がイヤな理由 / 数はくたびれる / 数に強い人とは / 数に強い人の頭の中 / 頭の中で全体を作る / 全体の中でとらえる / なんでも数にする

2 数の感覚をみがく

気色が良い数・気色が悪い数 / ゼロの個数を丸覚えする / その場で数を作る / 体感基準をインプットする / 数の認識回路を持つ / ザックリのすすめ / ドンブリのすすめ / ドンガラのすすめ / 数を立体的に表わす

3 数の声を聞く

ぜんぶ「1人当たり」にする / 水呑百姓はどれほど苦しいか / 「変わる」を基軸にする / ソロバン頭を育てる / 1000を聞いて1で知る / 音と光と数の不思議

4 数を使う

1日1000歩1キロの法則 / 1駅2分の法則 / 自己評価は2割増しの法則 / 6%の原理と7‐10の法則 / 大入り満員7掛けの法則 / ニッパチの法則 / 2‐6‐2の法則

おわりに

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3・4は、数と日常の関係。4は数学の概念を日常に取り入れて、「数に強く」なる考えを披露している。別に数学を知らなくても読める点がおもしろい。

ウェブサイトを制作していると、「数に強い」と思わしき人に遭遇する。右、些末。「様々」「色々」と多用していないだろうか?

数に強い人は、「数を作る」文章を書く。全体を構想し、その全体の解釈に必要な数を用いる。すると、読み手は意識せずに、数から枠組みを想像でき理解が深まる。

「数字なんて大ッキライ」という人だけでなく、文章を書く人にもおすすめ。