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[Review]: 死刑弁護人
- 2008-07-02 (Wed)
- Review
来年、裁判員制度の運用がはじまる。先日、朝生でこのテーマを扱っていた。賛成側と反対側、それぞれに言い分がある。二項対立はテレビの意図だから折り合いをつけるような議論に向かわない。素人の私にはかえってよかった。成立までの背景と制度の概要、賛成側と反対側が俎上に載せる論点も理解できた。共通点もあった。それは、「司法の危機」らしい。法曹界に棲む人々はそうそうな危機感を抱いているようだ(ポジショントークもあると思うけど)。表現は違えど同書の著者安田好弘弁護士は「この国の司法はどこに向かっているのか」と舌鋒鋭く論ず。「司法の劣化」とも。
いろんな事件の裁判にかかわって、はっきりと感じることがある。
なんらかの形で犯罪に遭遇してしまい、結果として事件の加害者や被害者になるのは、たいていが「弱い人」たちなのである。
他方「強い人」たちは、その可能性が圧倒的に低くなる。
私のいう「強い人」とは、能力が高く、信頼できる友人がおり、相談相手がいて、決定的な局面に至る前に問題を解決していくことができる人たちである。
そして「弱い人」とは、その正反対の人、である。『死刑弁護人 生きるという権利』 P.3
「弱い人」が犯した罪のうち、同書に登場する事件は以下。
- 光市母子殺害事件(差し戻し控訴審の判決前まで)
- 新宿西口バス放火事件
- 山梨幼児誘拐殺人事件 (一審死刑、二審無期懲役)
- 名古屋女子大生誘拐殺人事件 (一審、二審、三審死刑 1995年12月死刑執行)
- 宮代事件 (加害者の兄弟にそれぞれ死刑と無期懲役 1998年最高裁で刑が確定)
- 北海道庁爆破事件
- 北海道連続婦女暴行事件 (1972年5月に事件が発生、 1990年9月に上告棄却により死刑確定 2004年6月4日札幌拘置所内にして病死)
- ダッカ日航機ハイジャック事件
- 山岳ベース事件
- オウム真理教事件
法曹界に多くの支持者を持つ反面、テレビからは蛇蝎の如く嫌われる。テレビの思惑が那辺にあるか知らない。一読したとき、「あたりまえだ。だけどやっぱりあたりまえだと納得できない」感情がふつふつと。胸中穏やかならず。罪を犯した人が弁護を受ける権利。刑事弁護人の使命。あたりまえのことだとわかっている(つもり)。私は本村洋さんのように論理的に反駁を加えられない。ひたすら情動のおもむくまま。テレビも同じかなぁ。同書に登場しない名古屋アベック殺人事件とYouTubeのインタビュー。
安田弁護士の弁護は想像を絶する量と時間。どうやったら膨大な量をこなせるのか、ほんとうに寝ているのと目を疑いたくなるほど。弁護士の職責を果たそうする、あるいは先生の信念にもとづいた行動に尊崇の念を抱く。だけど尊崇と書けば書くほど胡散臭いと自己嫌悪するのは、頭でわかっても身体が拒否するからだろう。インタビューに登場する宮台真司先生や安田弁護士も含め、ひとつの事件を「審問」するとき、ひとつの上の次数に視座をあげ全体を鳥瞰しなければならないのだと思う。そこは感情が排除された世界か。100%排除できなくてもできるかぎり。そうでなければ審問は私的制裁になりかねない。
裁判を私刑にしない原則は
- 無罪推定の原則
- 検察官の全面的な立証責任負担の原則
- 直接主義、口頭主義、公開主義の原則
であって、これが公平・公正な刑事裁判を支えてきた。 だけど、それがオウム事件をきっかけに放擲されてしまった。そうだと思う。森達也が指摘するようにオウム事件以降、三権分立どころか三権がそろい踏みで厳罰へと舵を切った。そして、光市母子殺害事件が起きた現在、過去の事件をググると「どうして死刑判決じゃないの」と首をかしげる(死刑廃止と存置の問題は別、念為)。すべて「今、起きたこと」から振りかえる。「今、起きたこと」を括弧に括るのはむずかしい。むずかしいから悟性よりも情意を前景化させる。賛同を得やすい。
いま、そんな過渡期なのかもしれない。中庸は目に見えない。目に見えやすい両極へと振り子を振るとわかりやすい。支持も集まる。私はまだまだ情動で判断している。それではだめだと論理に傾こうとする。その狭間を往来している。読了後、無性に胸がかわいた。
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[Review]: 幽霊人命救助隊
- 2008-06-19 (Thu)
- Review
2007年度の自殺者は33,093人で10年連続30,000人を超えた。03年度の34,427人に次ぐ多さ。年代別では60歳以上の高齢者が8.9%(12,107人)と最も多く、次に30代が6.0%(4,767人)。両世代は統計をとりはじめた1978年度以降で最多の人数(参照: 自殺者:10年連続で3万人台 高齢者と30歳代増加 - 毎日jp)。1日に90人が自殺する。日本の文化と自殺の関係を報じる海外や先進国のなかで突出した自殺者数である点などについて議論が展開されている(参照: 日本の自殺 -Wikipedia)。わたしはよくわからない。今年に入って急増している硫化水素による自殺とかを耳目すると連鎖も否めないと思う。ただ、手段は何にせよ自殺したいという目的を持つ人がいる点に着目するとわからなくなる。
人が生きていることには意味も目的もないのではないか。人はただこの世に居るだけではないか。そう考えたほうが気が楽だ。そもそも命の意味とか目的とかを言い出したら、それに当てはまらない人間は生きるに値しないことになってしまう。『幽霊人命救助隊』P.446
幽霊が自殺しようとする人を助ける。幽霊は4人。浪人生の裕一、老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。4人は自殺して幽霊になった。なぜ幽霊が地上に戻って人を助けるのって思って読み始めた。
奇想天外なプロットとほんのちょっぴり気の利いたユーモアで、自殺に向きあおうとする。冗長な感もある物語も、3万人の自殺者の背景を十把一絡げにしようとしなければしょうがないかなぁと思う。
- 自殺者の揺れ動く心情
- 自殺しようとするきっかけ
- 自殺する人の思い込み
- 自殺する人の鬱
- 自殺する人と周囲の誤解
約600頁に及ぶ物語も、自殺を考えるには絶対足りないよ言いたげなほど、「自殺」に向きあう。なんていうのかな、理想論をふりかざすのじゃなく、「現実」っていうのか、「自殺」した人が自分の自殺を語るシーンは突き刺さった。幽霊人命救助隊のひとりアンニュイな若い女が語る。
「それでビルの屋上から飛び降りたの。ちょうどここくらいの高さから」と言って、美晴は十階下の路上を見下ろした。「でもね、やめときゃよかったって、すぐに思ったわ」
「空中を飛んでる最中に?」美晴はうなずいた。死を目前にした取り返しのつかない後悔を想像して、裕一の身の毛がよだった。自分が全体重をロープにかけた瞬間と同じではないか。
「もっと美味しいものを食べておけばよかったとか、遊びまくるべきだったとか、短い時間にいろいろ考えたわ。でも体は落ち続けた。もう助からないと思ったら、今度は生まれてからの出来事が全部見えた。迫ってくる時地面もね。で、激突。グシャって」
その先は聞きたくなかったが美晴は続けた。『幽霊人命救助隊』 P.374
私も聞きたくなかった。だけどすぐ隣の行に裕一が聞いた美晴の言葉が続いた。グシャの情景。目をそむけた。裕一と同じように絶句した。美晴が語った飛び降りている最中の心理や飛び降りたあとの人体について、「心理学」や「医学」の見地から適切かどうかを検証することもでできるはず。だけどそういった知識を持ち合わせていない私には、ひたすら生々しかった。
1986年4月8日、ひとりの女性が飛び降り自殺した。アイドルだった彼女は芸能界への頂点へと一気に駆け上がっていくところだった。そんな矢先の自殺。その自殺が与えた衝撃は若者へ。若者たちはあとへ続いて自殺した。この連鎖反応も本書に登場する。実名こそ出てこないけどほぼ同じ設定で。
政府が認めるように有効な手段をなかなか打てない。不景気に連動している(失業率)という指摘もあれば、鬱病が原因という識者もいる。なんとか食い止めようと医学や科学は欧米の研究を援用してサポートする。私はほんとうにわからないけど、できるだけ形而上へと昇華させずに、こういった小説からゆっくりコミットメントしていきたいと感じた一冊。
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終身刑は判決じゃなく刑の運用では?
- 2008-05-03 (Sat)
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政治家は機会をうかがっている。裁判所も同じかなと穿ったり。光市母子殺害事件の上告審で主任弁護を担当した安田好弘氏に罰金50万円(求刑懲役2年)の逆転有罪を言い渡した(参照:NIKKEI NET: 安田弁護士に逆転有罪で罰金刑・東京高裁)。4月23日。光市母子殺害事件の差し戻し控訴審判決の次の日。逆転有罪かつ異例の罰金刑。そして今度は「終身刑」が出てきた。首をかしげる。
現行法では、死刑に次ぐ重い刑は無期懲役。しかし、法務省によると、平均25年程度で仮釈放されており、死刑より軽く無期懲役よりは重い刑として、終身刑の創設を求める声が少なくなかった。
平沢議員は議連の意義について「死刑廃止論とは相いれないが、終身刑の創設の部分では一致している。平行線の存廃論議と切り離し、裁判員制度で市民が悩むことになる前に解決しなければいけない」と強調する。参加予定者の中には、山口県光市で起きた母子殺害事件の死刑判決をめぐり、「終身刑の必要性を考えるきっかけになった」と話す議員もいるという。
私のような市井の徒がいずれ司法に参加しなければならない。今の私は罰金を支払うつもりだけど。法律をまったく知らない。にもかかわらず、ちょっと本を調べれば、終身刑は「判決」ではなく「刑の運用」の問題を含むと理解できる。たとえば、現在でも「非転向」の政治犯は仮釈放を与えられにくい。日本赤軍がらみとか。なのに政治家は「判決」の問題として俎上に載せようとしている。政治家と司法は判決と刑の運用の峻別を丁寧に説明すること、それが求められているのでは?
以前、芸人やタレントがコメンテーターをしているテレビ番組で「終身刑にしたらええやん」みたいなコメントをしていた。感情を顕に正しいことを主張していると言わんばかりの顔で。そのコメントに対して、八代英輝氏が「判決と刑の運用の問題」をわかりやすく解説した。コメンテーターは沈黙。
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総務省からauへの警告?!
- 2008-04-11 (Fri)
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光ファイバーなみの回線といわれる次世代の携帯電話について、周波数の割り当て先を「2また3社」として、場合によっては大手の脱落もありうるかもとのこと。ここのところ行儀がよろしくないauへの警告だったり。邪推ですが
光回線並みの高速大容量通信が出来る次世代携帯電話を巡る動きが活発化してきた。総務省は来夏に通信事業者を選定する計画で、割り当て先は「2または3社」となる見通しだ。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの大手から「落選」が出る可能性もあり、業界各社は電波の割り当て方を注視している。
総務省はauに対してカンカンのご様子。それは、料金体系とプリペイド式携帯の無料配布。
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Bill Gatesが語る3つの施策
- 2008-03-14 (Fri)
- Article
1,100人のエグゼクティブが集ったbreakfast。そこでBill GatesとCraig Mundieがスピーチした内容に本邦との位相の違いを痛感。Craig Mundieはマイクロソフトの最高研究戦略責任者。彼が質疑応答で語った連邦議会への苦言?!
Members of representative democracy are supposed to know how to balance those competing goals, but Congress’s decisions are “too skewed to the short term right now,” Mundie said.
「矛盾する目的」のバランスをとる方法を議会制民主主義のメンバーなら知ってるはずと前置きしつつ、今の議会は「短期の目的に偏りすぎ」と指摘してる。世論調査とのにらめっこせざるを得ず、シリコンバレーの主張を政策に組み込んでもらうのにご苦労されている様子。
ここまでは日本も同じ。財政緊縮と格差是正の両立とか。目も当てられないけど。
じゃぁ、「短期の目的」じゃなく「長期の目的」はというと、Bill Gatesが連邦議会で提言したと。3つの施策。
Gates was on Capitol Hill Wednesday morning speaking to a House of Representatives committee about the need for three major areas of action: increasing the number of H-1B temporary visas and green-card permanent visas that are allotted to high-tech workers; increasing investments in federal research programs; and focusing on ways to improve the educational system, particularly in the math and science fields.
Bill Gatesが演説した3つの施策
- ハイテクエンジニアへ発行するビザやグリーンカード枠の増大
- federal research programsへの投資の増額
- 教育、とりわけ”数学”と”科学”のシステムを改善
なんだか「目線」が違うというか。日本がこの3つに取り組む姿勢がないというわけじゃない(1.は論点が別だけど)。ただ、最近の「上げておいて落とす」ような報道や批判の矛先を眺めると、「成長」をどこに置き忘れたかのような印象。
「成長」といっても高度経済成長期のような奇跡じゃなくて、sustainable noninflationary growth(インフレなきはちょっとね…..)を構築できる「長期の目的」がもっと語られないかと傍観。
まぁ、ねじれている間に今までのウミを全部出しちゃえよと思うけど。
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中国発食中毒中国発年金転記作業失敗
- 2008-01-31 (Thu)
- Article
時期同じくして「中国」発、混乱の様相に。食べて「死ぬかと思った」ほど。重篤だった千葉県のケースでは小児科の先生が「普通の食中毒ではない」と警察に通報。とにかく快方に向かわれることを祈念。ただ、以下2つの事件を比較したとき、「自給」はどこにいったんだろうとバカなギモン。
食品・外食業界では、中国産食材なしには成り立たないほど深く浸透しているのが現実であって経済を無視できず、「どう考えても供給過多だろ」とぼやいてみても、だったら適正規模になればって放擲すれば、全体の雇用を維持できず、ますます依存は深くなる。道路みたいだな。
緊急時の処置としてスーパーから撤去したり輸入禁止処置をとったりしてるけど、喉元過ぎれば熱さを忘れるやら人の噂も七十五日とか。なにか根本を忘却してないかな。で、このブログや裏ブログで何度もノーガキたれてますけど日本人が国内産を食べられなくなる日がやってくるのかなぁと妄想したり。39%の自給率で国内生産物で供給できる献立の食事をつくると
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分をわきまえる
- 2007-12-23 (Sun)
- Diary
天皇陛下の記者会見全文を読む。格差社会の問題について、興味深い御意を。自由競争とセーフティーネット。宮内庁の誰が記者会見の問答を書いたのかわからないけど、天皇陛下の役割を果たさせようという意気込みが感じられて好感を持った。
もっとも琴線にふれた言葉。
「心の中に人に対する差別感を持つことがないような教育が行われることが必要と思います」
私は「平等」と受け取らない。むしろ「分をわきまえる」との物言い。やんわりとにこやかに厳しい一言。「我慢」が二の次になって、「依存」と「放恣」が主役に躍り出る。
秋霜烈日と志操堅固。
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民間でできないことって何だろう?
- 2007-12-12 (Wed)
- Diary
今朝の朝日新聞の地方版に掲載された記事。他意はないので委細承知で引用。
———-引用開始———-
【公債費年間700億円社会保障負担倍増・・・「痛み」に理解求める】
嘉田知事は県市長会など4団体の要望に対し、県の財政状況を次のように説明した。
昨夏の就任後、県の台所事情が想像以上に厳しいことに気づいた。
県の財政硬直化の大きな理由の一つは、平成初期にかなり大きな投資をしたこと。ハコモノなど社会資本が整備され、私たちは今その成果を享受しているが、年間約700億円の公債費負担がある。しかも、維持管理費には国庫補助がなく、負担がのしかかる。二つ目は国の三位一体改革で、年100億円ずつ地方交付税が減っていること。3点目は介護保険など社会保障関係の負担が、ここ数年で2倍に膨らんだことなどがある。
このままでは来年度400億円の財源不足が見込まれ、このまま放置すると、財政再建団体に転落する可能性がある。事業費だけで140億円削減したい。県も職員の給与カットで約30億円を浮かす。私自身も退職金を返上して県民に改革への思いを伝えたい。
医療費と私学助成は、さまざまな事業を削りに削って最後に決断した。ある程度の「痛み」はお願いしなければならない現状だ。県民の負担増に関しては今後、市町と協議したい。
———-引用終了———-
打つ手なし感が漂う。近ごろますますわからないことだらけでとまどう。東京では「泣く子と地頭と政府には勝てないからね」と石原都知事が憤り、「本当、見事に官僚支配の国家になったな、この国は」と皮肉っていた(参照)。
選挙を控え、政治家が「格差是正」を訴えるために官僚を怒鳴りつけた結果、と思いきや、どうも違うのでしょう。やっぱり「予算」を手放したくないのかな。農業政策と同じように、「生かさず殺さず」程度に地方をころがすおつもり?
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[Review]: 脳のシワ
- 2007-09-27 (Thu)
- Review
『脳のシワ』を読んだ。ふと書棚に目をやり養老孟司先生の著書をずいぶん読んできたんだなぁと気づく。とはいえ専門分野の書籍(『唯脳論(ちくま学芸文庫)』を除く)は読んでない。わかる・わからないすら判断できないのでふれてもムダだから。じゃぁなぜ読むか? 対偶がすぅと身体に入ってくる快感。それを忘れられない。あとは、先生のワガママか。先生曰く、「河合さんの訃報を聞いて、私はもっとワガママをしようと思った」という言動は意地悪ばあさんみたいで諧謔にみちあふれている。現象から本質をつかみ取る毒舌ここにあり。
現代社会ほど死が語られ、そのわりには死の蔭が薄い社会はない。昨年、必要があって『平家物語』を読み直した。うかつな話だが、この物語がまさに死者の書であることに、やっと気がついた。ほとんどすべての登場人物が死ぬのである。人が死ぬことはわかりきったことだが、現代人は自分が死ぬとは思っていない。死について語れというが、それだけに自分が死ぬとは本気で思っていないのである。本気で思っていれば、他人から死の話を聞く必要などない。死はそれぞれだからである。P.36
先生が指摘するように私も「死に触れた」ことはない。肉親も含め、誰の臨終にも立ち会っていない。小学5年生のとき臨終直前の祖父を見舞った。末期癌でほとんど反応できない祖父に私が大きな声でよびかけ手をにぎったとき、かすかに口元がゆがんだそうだ(私は覚えていない)。
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[Review]: 正しく生きるとはどういうことか
- 2007-09-19 (Wed)
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前作、『他人と深く関わらずに生きるには』と比べても内容に大差はない。ただ、いくぶん受ける印象が変わった。理由は前景に思想がおかれたから。前作は後景に思想があった。思想を前景か後景のどちらに描くかは、作品の仕上がりに影響を与える。こうも様変わりするとすこしばかりのけぞった。前景化された思想を原理主義に染めないようにコントロールするのは難しい。その手綱さばきを味わえる一冊。
じゃ、何が書いてあるかって。善く生きるための原理が書いてあるのだ。原理といったって別に難しいことじゃないよ。善く生きるやり方は人によって様々だし、同じ人だって、状況によって変わることもある。[...]この原理をひとことで説明することはできない。ひとことで説明できるのなら本を書く必要なんてないからね。でも、あえて言えば、自分なりの規範を決める、ということかな。『正しく生きるとはどういうことか』P.8
池田清彦先生は「自分なりの規範」という。私はこれを規矩と読む(正解かどうかはわからない)。自分なりの規範は道徳や倫理と違う。道徳や倫理は他人が決めた規範だ。本書のいう規範はあなたが決める。
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