汚れやすいものを清潔に保つ

皇子山公園の白梅

白い布を清潔に保つというコミュニケーション

基本的に布はやわらない。だから、このサインを取り付けてある空間もやわらかい表情になる。しかしさらに重要なポイントがある。サイン本体が白い木綿の布でできているということは、とても汚れやすいということである。

わざわざ汚れやすい綿布を用いたのである。それは「汚れやすいものを常に清潔に保つ」ということを実践してみせるためである。汚れやすいものを常に清潔に保っていることは、最上の清潔さを来院者のために確保しているということの表明になる。

最上のホスピタリティの存在を来院者にアピールしているのである。

“デザインのデザイン” (原 研哉) P.75

効率を優先するのなら「白」は選ばれない。白いテーブルクロスを用いるレストランに出会う機会が減った。汚れが目立ちにくい色や素材を使う。効率と回転。

ムダばかりもどうかと思うけど、無駄のない空間は落ち着かない。厭だ。最も必要な無駄を考えた人がデザインした空間は心地よい。「最上級の無駄」を確保するためにムダを徹底的に削る。

自分たちに最も必要な無駄は何か?

ムダを削る前に問わないと、すべての無駄を失う。そこに大切な価値が棲んでいたのに。その価値は来訪者を抱きしめる時空であったのに。来訪者が気づいていた価値をムダと判定してしまった。

白。余白。

余白を生む余裕。余裕の裏に隠された焦燥。不安定。不安。それら安定しない揺らぎをおくびにも出さずに演出する。

ムダを削り、無駄を創る。

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