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[Review]: 逆立ち日本論

逆立ち日本論 (新潮選書)

この対談では、内田さんに大いに語ってもらいたかった。だから私は聞き手のつもりでいた。内田さんの発言は長くなっている部分があるのは、そのためである。あたりまえだが、自分の発言なんて、自分にとっては、なんの参考にもならない。しかも古希に近くもなれば、他人にとっても参考になるかどうか、あやしいものである。それでも相づちだけでは対談にならないから、いわずもがなのことをブツブツと述べた。『逆立ち日本論P.6

『街場の中国論』の書評で、養老孟司先生が内田樹先生の思考を「対偶」と評したことについてふれた。それが本書。対談中に登場する。

養老: この人はぼくと同じ考え方をする人だと勝手ながら感じました。考える経路が似ているのではないかと思ったのです。ぼくはそれを「対偶」の考え方と呼んでいます。「AがBだ」というときに、「AがBではないとは、どうしたらいえるだろうか」と、反対側から考えてみるんです。「逆さまから考える」と言ってよいのかもしれません。P.41

対談しているお二人には、共通項が二つある。

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[Review]: 官僚とメディア

官僚とメディア (角川oneテーマ21 A 62)ニュースや新聞の見方を再考させてくれる一冊。

事件記者たちが 当局の捜査を批判する記事のスタイルを持っていないのは、日本のメディアの報道が「客観報道主義」に基づいているからだ。記事のスタイルはこの客観報道主義に基づいて交通事故や窃盗事件から誘拐殺人のような大事件にいたるまでそれぞれに応じて決められており、新人記者はそれを覚え込まされる。『官僚とメディア P.116

新聞原稿にはスタイルがあり、それは学生時代に書いてきた文章とはまったく違う。火事には火事の 、殺しには殺しのスタイルがあるという。このスタイルにそって記事を書かなければならない。

記者の「主観」は排除される。徹底して主観の視点が排除され、官庁が集めたデータや、官庁の見方に依拠する。だから「誤報」はあり得ない。当局発の情報に依拠しているから間違えないという論法だ。

ただし、その姿勢が時に「官庁の広報」と化す。

さらに日本のメディアの特質を形成している要因がひとつある。それが、記者クラブ制度。

新聞やテレビが流す情報の七・八割(私の実感に基づく推測値)は各種の官庁から供給されている。記者たちの多くが官庁のなかに設けられた、閉鎖的な記者クラブに所属し、そこで役人のレクを受けたり、役人宅に夜討ち朝駆けをかけたりして情報をとる。記者たちに要求されるのは官庁情報をいち早く簡潔に、しかも正確に記事化することだ。それができる記者は優秀とされ、そうでない者には「ダメ記者」の烙印が押される。同P.120

風邪薬に中国産毒性物質混入されていた海外ニュースがどうして報じられず、ペットフードの記事も旧聞になってから朝日が報じる程度。その理由も本書によって氷解した。

「メディアは情報幕僚の一役を担ってもらいたい」———-そんな官僚の算段が見え隠れするし、メディアも確信犯的ふるまいに終始していないか。そこに”なれあい”が生まれ、批判を排除された客観的事実が流される。

しかし、それは果たして客観的事実なのか。主観/客観を形而上学的に論じれば甲論乙駁となる。それを捨象したとして、マスコミが報道する記事は、官庁が編集した主観的事実のように私には映った。

本書には「耐震偽装問題」が登場する。人心を惑乱させるかのように飛び交ったメディアの報道はいったい何だったのか。当初から政財官のトライアングルを報じようとした。しかし、蓋をあければ姉歯の個人犯罪だと裁かれている。「姉歯の個人犯罪 」という見解の一部始終が本書で述べられている。

私は新聞も読むし、ニュースも視聴する。とはいえここ数年、それに割く時間が激減した。メディアリテラシーという単語で片付けるのではなく、じっくりと立ち止まって考える時間と空間が必要だと思う。

ジレンマは事件の一次情報を自ら取得できないということ。こればかりはマスコミの「広報」に頼らざるを得ない。そこに「気づいた」とき、ジレンマを抱えたが、今は違う。

もう新聞やテレビから自らを遠ざけていけば、痛痒を感じない。無関心ではなく、何を取捨選択するのかを、日々の事件や事故から吟味するのではなく、ひとつ次数をあげた視座から掬い取れるようになりたい。それを再認識させてもらった一冊。

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