僅かなもの

生きてゆくのには、ほんの僅かなものがあれば足りる。なけなしの空間と、食物と、娯楽と、器具や道具。これはハンケチの中の人生だ。その代わり、そこには魂はたっぷりとある。そのことは、通りの賑わいにも日差しの強さにも、取るに足らぬ議論の激しさにも感じとられる。

『悲しき熱帯〈1〉』 レヴィ=ストロース P.236