非効率な低コスト

趙さんの焼きそば定食

ヒトは、今でも、「身体表現を通じて自分を理解する」という不思議な手続きを踏んでいる。常識的に考えれば、「脳の持ち主は自分なんだから、脳内で自身に直接アクセスすれば、もっとストレートに自分を理解できるんじゃないか」と思うよね。「体を通じて自己理解する」というのは、理解までのステップが増えてしまって非効率だ。

でも、「生物は先祖の生命機能を使い回すことによって進化してきた」という事実を忘れないでほしい。

いや、「使い回す」ことしか、僕らには許されていない。「無」からいきなり新しい機能を生みだすことは進化的にはむずかしいことだ。そんな困難なことに時間を費やすくらいなら、すでに存在しているすばらしい機能を転用して、似て非なる新能力を生みだす方が、はるかに実現可能性が高いし、効果的だろう。

そうやって生まれたものが、僕らの「自己観察力」だ。これは「他人観察力」の使い回し。自己観察して自己理解に至るというプロセスは、一見、遠回りで非効率かもしれないけど、進化的にはコストは低い。

『単純な脳、複雑な「私」』 池谷裕二 P.181

自己観察から自己理解に至るプロセスを組織に適応してみる。

趙さんのお店は他人観察の使い回しをするにはうってつけの場所。焼きそば定食万歳。