39

お願いだから、どんなに離れていても、きみの耳をぼくの口にぴったりくっつけてくれ。いまもそうやって。あるいはずっとそうしてほしい。でないと、ぼくはきみに理解してもらえない。で、たとえきみがぐずぐずして頼みをきいてくれないとしても、沈黙というやつがたっぷりのこっているだろうから、きにみは、そいつを自分で補ってもらわなくては。ぼくの声が故障している場所では、きみの声が必要なんだよ。

『鏡のなかの鏡―迷宮』 ミヒャエル エンデ P.1

1985年、ぼくはおじさんの部屋へ足を踏み入れた。12歳年上のおじさん。部屋にはレコードが並んでいた。見たことのないステレオ。四角のボタンと円のボタンがならんでいた。ある日、棚からあるレコードを取り出した。ジャケットには、『オペラ座の夜』 と書いてあった。バンドの名前を知らなかった。レコード盤にのせて針を落とした。5番目の曲がかかったとき、ぼくは震えた。すぐにジャケットを手に取り曲名を見た。『39』。

はじめて聴いた。なのに懐かしく感じる。不思議な気分だった。歌詞を読めなかった。だから悲しいのか嬉しいのかわからない。それでも何度も何度も聴いた。

39。13の3倍。完全トーティエント数。日本の刑法39条(映画の堤真一さんがスゴイ)。旧約聖書は39篇。数字はもともと”あった”にすぎないのに、こうやってヒトは数字に意味を持たせたくなる。

『39』は、1stアルバムの最初の曲から順に数えて39曲目にあたる。偶然にも『39』はぼくを魅了した。数字の39と音楽の39。

おじさんの部屋、正確には祖父の家が好きだった。せまい家。だけど、ぼくの家にはないものがった。それは祖父の本棚。祖父はすでにいなかったけど、本棚と本だけは残されていた。本棚に並ぶ本を眺めていた。いま、その本棚はぼくの家にある。せまいせまい部屋の半分を占めている(笑)

祖父の家へ行き、本棚を眺め、『オペラ座の夜』を聴く。週末が楽しかった。オペラ座の夜には『Bohemian Rhapsody』が収録されている。

2年後、パンクやヘビーメタルを愛してやまない友人は、お前の聴いているバンドは有名や、とあきれながら教えてくれた。