町屋の顔

珈琲カップ

半熟玉子を手で割って、トロリとした黄身のところがおいしそうと思いながら、軽くすった胡麻をふわっとふりかけ持っていく。
すると、手が伸びて、スタイリストのTさんがテーブルの上に置く。H氏はすでにレンズをのぞいていて、すぐにシャッターを押し始める。彼の視線の矢印は、きっと黄身のところにささっている。
次の料理の準備をしていてふと気がついた。

『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』 高山 なおみ P.195

秋に行事が控えていて幹事をまかされている。その関係で奈良へ行く機会が増えそうだ。来月も行く。高校生の頃から京都へはよく出かけた。凝っていた時期は毎週出かけた。でも、奈良へはなかなか足を向けなかった。

奈良「県」の由来を読んだり町屋を散策していると、京都や大津の町屋と違う顔だと認識した。あたりまえなんだけど。文化遺産に目を奪われそうになるところをぐっと堪えて、町屋と生活に目と耳を緊張させる。

建築や木、歴史の知識を持っていたら違う楽しみ方もある、と思う。そういった分野に無知だから、目の前に広がるデザインをせめてそのまま受け入れようとゆったり過ごす。自分を楽しませ、他人を楽しませる。コンテンツを読解してプレゼンする力。演出。時間と空間の配慮。難しい。