自然に自然はない

「この辺りの自然を見ていると、実に力強いと思うよ」譲が後ろを振り返って言った。
「本当に……….」保呂草は頷く。
人類が自然を破壊する、という言葉の存在が、実は逆説的な表現なのだろう、と思える。ほんの僅かの自然の変化にびくびくして、それを自然破壊と呼ばねばならない。それが弱い人間の立場なのだ。

『捩れ屋敷の利鈍―The Riddle in Torsional Nest』 P.46