機能 < デザイン < ブランド

先週の土曜日、ランニングシューズを買った。運動は心臓や間接に負担をかけ、かえって身体を壊すのではないか、と常々疑っている。我ながら今回の行動に驚いた。ここ数年、足腰の筋力の衰えを感じていて、先日の健康診断でも自覚できた。運動指導の先生から指摘された内容と自分の予想が一致していたので、費用対効果に不満はナシ。心肺機能は問題ないけど、足腰の筋力が予想以上に低下していた。あと血圧がやや高めだった(予想どおり)。

健康診断の時、20mダッシュを50本近くやってみたあと、身体の調子がよくなった。というわけで、少し運動してみようと思いったのが今回のはじまり。場所は、大津パルコ前のショップ。ところが困った事態へ。店内を数分歩いて吃驚。なんていうのかな、今履いているオニツカタイガー MEXICO 66 LAUTAのようなスニーカー風のランニングシューズがない!! うまく言えないけど、もっさりしている、いや、あ、なんだろ、走ってますよとアピールしているようなシューズばかり。あれ、SFにでてきそうなシューズもあったり。マイッタ。

店内をウロウロすること30、40分。そのあいだ、とにかく考えた。どうしてこんなデザインになるのだろう、と。だけど、自分が間違った方向へ歩いているのに気づいた。ランニングシューズの役割は機能だ。デザインに目をやる僕に対して、機能性を重視すれば、おのずと目の前にあるデザインになるのかなぁと考え直した。むしろmobusやTiger、Patrickなどは、スポーツスニーカーというジャンルのファッションなんだなぁと思った。

そうこうしていると、丸刈りの男性スタッフがやってきて、「走られるんですか?」と訊ねてくれた。ボクシングの内藤選手にちょっと似ている。第一印象は、引き締まった身体。スリムな足に目がいく。ジーンズを脱ぐと、か細い足じゃなく贅肉がそぎ落とされた脚が現れるかも。話を伺うとランナーのようだ(どんなランナーかは知らない)。事情を説明した。そのやりとりがたいへんおもしろかった。僕が選ぶシューズは、ほとんどナイキ。なのにスタッフはミズノかアシックスを控え目にすすめる。もちろん、選択を否定したりしないけど、なるべく選ばないように言葉を探しているようだった。

ナイキを選ぶ理由は3つ。

  1. ランニングシューズのなかでは比較的洗練されたデザイン(もちろん主観的)
  2. 少し高めの価格設定
  3. ブランドイメージ(笑)

スポーツスニーカーやランニングシューズの履き心地は、価格に比例すると思っているから、なるべく高いシューズを選ぶ。予算内なら一番高いモノをいつも買う。とにかく「継続」が目的だから、シューズが足に合わず、嫌になることは避けたい。

ところが、ミズノをすすめるスタッフは違う。(在庫のある商品のうち)上から3、4番目あたりの価格をすすめる。不思議だった。ナイキとミズノ、競合するシューズはどれもナイキが高い。お店にとって、ナイキを買おうとする客をとめる理由はない。

迷っていると、スタッフはナイキとミズノのシューズをそれぞれ片方ずつ履かせてくれた。右足にナイキ、左足にミズノ。同ランクのシューズ。あきらかに違った。ミズノのほうが僕には合っていた。即決だった。スタッフは、はにかみながら口にした。

「私もはじめはナイキやリーボック(かパトリックだったか)を履いていたのですが、一度、勇気を振り絞ってミズノを履いて吃驚しました」

日本のメーカーが日本人の足に合うように製造している理由を体感した。じゃぁ、どうして一番高いモノをすすめないのか(このときすでにコスト意識が芽生えはじめていたけど)。その理由も説明してくれた。納得。たしかにおっしゃるとおり。

今回の説明は、何も知らない僕が受け入れるのに充分だったし、男性スタッフの応対へ感謝。もちろん、シリアスランナーやトレーニングランナーの方々は、違う意見や否定的な見解をお持ちだろう。ただ、僕がはじめに抱いたようなイメージって、他の方々も持っていないだろうか?

日本のメーカーが製造する商品は、一度使えば、精密なつくりや秀逸な機能がわかるのかもしれないけど、その「一度」目で手に取らせようとする商品が少なくないかな? 機能<デザイン<ブランドの不等号は人ぞれぞれだろう。ランニングシューズの不等号は僕の中で変わった。