5人の料理人はしゃべらない

雷門

雨の中、浅草へ参って驚いた。観光客の半分は外国人じゃないかと思ったくらい。英語だけでなくいろんな言葉がとびかう。まぁ、ある国の言葉だけよく耳に入ってきた。ある国の人たちは雨の仲見世通りのど真ん中で傘をさして横に広がり記念写真に夢中。ひときわ大きい声。

鰻 小柳

これじゃぁお昼は混むなぁと思い、少し早めに店を探す。鰻を食べたかったのでそぞろ歩きでアタリをつける。そしたらひきよせられるような店構えにフラフラと扉を開けた。

やっぱり。少し早めなのに一階はほぼ満席。入って左手がカウンター、右手が6人掛けのテーブル4つ。相席でと。もちろんよろこんで。鰻重松 2,100円。肝吸い105円。日本酒を嗜みながら鰻をつまむ。ほんとうに幸せだ。なんて贅沢なんだ。鰻をひとつまみ。日本酒をクイ。左へ首をむけると、カウンター越しに五人の料理人。

横浜、鎌倉、東京をフラフラと眺めているとオープンキッチン(って言うんでしたっけ?)のお店が多いことに驚く。”オシャレ”って感じのお店や若い女性が列をなしているお店のキッチンは丸見え。なるほどなぁと感心していた。だけど写真の鰻のお店に入って、自分の浅慮に反省した。そうやんなぁ。お客さんの目の前で鰻を焼く調理場。オープンキッチンなんて洒落た名前はついてないけど。新しい単語や気の利いた言い回しに惑わされちゃいけない。さもトレンドのようだけど「ほんとう」を見失ってはいけない。

五人の料理人はほとんどしゃべらない。必要最低限の単語だけを交わし、あとはそれぞれが自分の役割を粛々とこなす。そんな光景をながめながら日本酒をクイ、鰻に箸を入れる。で、肝吸いをすする。無駄な音が聞こえないお店、そこから醸し出される雰囲気。仲見世通りで聞こえたあの国の音量で話すのは憚れる。別に大声を禁じてるわけじゃないし、周りのお客の声は耳に入ってくる。ただなんとなく食べることに集中させるような感じがあった。たぶん、料理人とお店が長い年月をかけて醸成してきた見えない財産なんだと勝手に妄想した。