分をわきまえる

天皇陛下の記者会見全文を読む。格差社会の問題について、興味深い御意を。自由競争とセーフティーネット。宮内庁の誰が記者会見の問答を書いたのかわからないけど、天皇陛下の役割を果たさせようという意気込みが感じられて好感を持った。

もっとも琴線にふれた言葉。

「心の中に人に対する差別感を持つことがないような教育が行われることが必要と思います」

私は「平等」と受け取らない。むしろ「分をわきまえる」との物言い。やんわりとにこやかに厳しい一言。「我慢」が二の次になって、「依存」と「放恣」が主役に躍り出る。

秋霜烈日と志操堅固。

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天皇陛下:きょう74歳 記者会見全文(1)

(問1)今年は、食品の虚偽表示を発端とする「食」への不安、年金や社会格差の問題など、暮らしの安全が脅かされた一年でした。こうした様々な社会情勢について、陛下の思いをお聞かせください。

陛下 生活の基本である食と住に関して一昨年から今年にかけて国民に不安をもたらすような事情が明らかになったことは残念なことです。

年金の問題については、戦後の復興と、その後の国の発展を目指し、一生懸命まじめに働いてきた人々が、高齢になって不安を持つことがないように、この問題が解決の方向に向かっていくことを願っています。

社会格差の問題については、格差が少ない方が望ましいことですが、自由競争によりある程度の格差が出ることは避けられないとしても、その場合、健康の面などで弱い立場にある人々が取り残されてしまうことなく社会に参加していく環境をつくることが大切です。また、心の中に人に対する差別感を持つことがないような教育が行われることが必要と思います。

過去を振り返り、公害によって健康の被害を受けた人々のことを考えるとき、当時はこのような問題に対する安全の問題が国民の間に十分に理解されず、被害者を苦しめてきたことが思い起こされます。多くの国民にこのような事態が少しでも早く知らされていたならば、被害を受けないで済んだ人も多かったのではないかと返す返すも残念に思っています。